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 オシロクオーツ社はスイスの時計メーカーグループのスウォッチグループの中で世界標準になる高精度周波数基準の機器を製造している会社です。場所はスイス北西部のヌシャテルにあります。ヌシャテルはウォッチバレーと呼ばれ、かつてクオーツ時計が世に出る前、機械式時計の精度コンテストが行われていた都市で時計生産のメッカでもあります。

 機械式時計の精度コンテストはクオーツ時計の出現により無くなくなりましたが、その後周波数基準の一次基準となる原子時計(ルビジウムやセシウム)の開発が行われるようになり、その中核で主に開発を進めた企業がオシロクオーツ社です。 世界でも数少ない PRC ( Primary Reference Clock = 周波数一次標準器。具体的にはセシウム周波数標準器を意味します)の製造メーカーで長年の実績とその実力から、周波数標準を生産するメーカーとして幅広く世界から認知されています。



オシロクオーツ社の社屋に入ると、
『The leading partner for your syncrhronization needs』
(周波数同期の需要の世界のリーディングパートナー)と書かれた大きな垂れ幕が目に入ります。オシロクオーツ社の周波数標準に対する自信が表れていますが、その高い信頼性・性能・精度を可能にしているのが、同社のOCXO製造部門です。 OCXOを生産する最終目的がOCXOの販売だけでなく、世界の周波数標準を作ることであるため、その生産設備はまさに世界中でもここにしかないキワモノ的な設備が揃っています。さすがに設備の写真をここで掲載することは残念ながら出来ませんが、そこから生産されるOCXOの性能は素晴らしく、広く世界に認知されています。

 中でもその最たるものが写真の
<8607>シリーズOCXOです。内部構造に複数の特許となる技術を用い、この発振器のためだけの製造ラインや工作機械も作り、まさにオシロクオーツのOCXO部門の技術の結晶のような発振器です。位相ノイズ:1Hzオフセット時で-125dBc以下という信じられない性能を持ち、短期安定度ではセシウム発振器を大きく凌ぎます。世界中で類を見ない高精度のため、この発振器の短期安定度を測定するには、同じ「発振器を基準に使用するしかありません。またオシロクオーツ社の生産ラインの計測機器の基準にも多く使用されており、ある意味この発振器がオシロクオーツ社の高精度・高信頼性を支えている部分もあります。



 オシロクオーツ社の高精度ダブルオーブンOCXOの生産量は量産レベルの数量をこなしているため、振動子の製造やアッセンブリ部門でのキャパシティもさることながら、測定部門のキャパシティも非常に重要なファクターになります。特にエージングベンチは高精度ダブルオーブンOCXOになると長期にわたって通電エージングが必要になるため、一度に数千個レベルでエージング試験を行えるベンチが必要になります。

右の写真の左上は出力波形やスペクトラムを測定する前のプレエージングの様子、右上は発振器として完成後に行う通電エージングです。各ベンチにはセシウム一次標準から分配された周波数基準が来ており、通電エージングベンチは空調ルーム内で1個1個6時間ごとに周波数がシステムにより測定及びデータプロットされます。下は温度試験のベンチで写真では分かりにくいですが、かなり大型の恒温槽を用いています。この恒温槽が多数あり、各ベンチにセシウム周波数基準に同期した周波数測定システムが組み込まれています。
 

        



 オシロクオーツ社は上記にあるとおり、周波数基準(同期)に関するコンポーネントの世界トップメーカーです。発振器工場のとなりにある研究開発棟では、セシウムの発振器をはじめ多数の同期コンポーネントがずらりと並びます。シンクロナイズの機器として、セシウムの他にGPSモジュールも手がけています。

セシウム、GPSと来ると 『ルビジウムは?』 と聞かれそうですが、オシロクオーツ社でもかつてルビジウムの開発を進めた時期がありました。しかし一次標準としてはセシウムが世界で認められるようになったことと、<8607>シリーズのOCXO単体でルビジウムに近い長期安定度と、より優れた短期安定度を実現してしまったため不要になり、開発の成果を他社へ委譲して現在は生産も研究も行っていません。左の写真はコンポーネント部門の研究棟の中のもので、GPSモジュールやセシウム発振器が写っています。



 このコンポーネントの研究棟にはユーザーサポートを重視するオシロクオーツ社らしく、ユーザーのためのトレーニングルームがいくつかあり、オシロクオーツ社のコンポーネントを導入するユーザーが事前に運用のためのトレーニングを受けることが出来ます。定期的に開かれるセミナーでは世界中のキャリアからエンジニアが研修に訪れます。



 オシロクオーツのあるヌシャテルは古い歴史のある都市ですが、雄大なヌシャテル湖を抱いた風光明媚なリゾート地でもあります。国外からの観光客からのルートからは少し外れるため観光で訪れる人は少ないと思われますが、パリからTGVの直行便があり、湖のほとりにはリゾートホテルが立ち並びます。町並みは古い中世からの建物が並び、きれいな石畳の坂道が続きます。また山の斜面にはワイン生産用のブドウ畑が多く、のどかな地方都市でもあります。

 スイスの言語はドイツ語・フランス語・イタリア語・その他に分かれますが、ヌシャテルはフランス語圏に入り、オシロクオーツ社でもビジネス言語は英語ですが、社内での会話はフランス語をよく耳にします。フランス語圏の人々はとても気さくで、工場内でもすれ違うと必ず挨拶されます。スイスと日本は腕時計の世界2大生産国であり、ともに精密機器に長けたお国柄で、相通じるものがあるのかもしれません。実際に視察時に工場の説明を受けていても考え方や手法に共感を覚えることも多く、とても感覚的に近いものがある印象を受けます。


  


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